PDF 処理において、文字の追加は非常に一般的なニーズです。レポートの自動生成、注釈の追加、テンプレートへの入力、バージョン情報の記載など、Python で PDF にテキストを追加すること によって、文書処理の効率と柔軟性が大幅に向上します。
手動編集や複雑な外部ツールに頼ることなく、PDF 専用ライブラリを用いれば、数行のコードで文字を正確に挿入することが可能です。この記事では、強力な PDF 操作ライブラリ Spire.PDF for Python を使用して、PDF へのテキスト挿入手順を解説します。
コンテンツ一覧
- ライブラリのインストール手順
- 新しい PDF を作成してテキストを追加する
- 既存の PDF にテキストを追加する
- フォント、位置、透明度、回転角度の設定
- よくある問題とクロスプラットフォーム対応
- まとめ
- よくある質問(FAQ)
ライブラリのインストール手順
まずは Python 用 PDF 処理ライブラリ Spire.PDF for Python をインストールします。
pip install Spire.PDF
Free Spire.PDF for Pythonをご利用の場合は以下をインストールしてください:
pip install spire.pdf.free
おすすめポイント:
- 外部ソフト不要で PDF 操作が可能
- テキスト位置・書式の精密な制御に対応
- 既存 PDF の編集、新規作成どちらにも対応
- OS を問わず動作(Windows、macOS、Linux)
新しい PDF を作成してテキストを追加する
Python で 白紙の PDF を新たに作成し、テキストを挿入 するには、以下のように操作します。
サンプル:新規 PDF に文字を挿入
from spire.pdf import PdfDocument, PdfTrueTypeFont, PdfFontStyle, PdfSolidBrush, PdfRGBColor, PointF, RectangleF, \
PdfStringFormat, PdfTextAlignment, PdfVerticalAlignment
# 新しい PDF ドキュメントを作成し、新しいページを追加
pdf = PdfDocument()
page = pdf.Pages.Add()
# ページに追加するテキスト(例文)
text = ("本レポートは、2025年第1四半期における各製品の販売実績をまとめたものです。"
+ "以下に、製品カテゴリごとの総売上の内訳を示し、"
+ "続いて、地域別の売上比較を行います。")
# フォント、ブラシ、描画位置を設定
font = PdfTrueTypeFont("Yu Gothic UI", 14.0, PdfFontStyle.Regular, True)
brush = PdfSolidBrush(PdfRGBColor(0, 0, 0)) # 黒色
point = PointF(50.0, 100.0)
# レイアウト領域と文字列フォーマットを設定
layoutArea = RectangleF(50.0, 50.0, page.GetClientSize().Width - 100.0, page.GetClientSize().Height)
stringFormat = PdfStringFormat(PdfTextAlignment.Left, PdfVerticalAlignment.Top)
# テキストを描画
page.Canvas.DrawString(text, font, brush, layoutArea, stringFormat, False)
# PDF ファイルとして保存して閉じる
pdf.SaveToFile("output/new.pdf")
pdf.Close()
🔍 技術解説:
PdfTrueTypeFont()
はシステムフォントを読み込み、サイズやスタイルも指定可能PdfSolidBrush()
によって文字色を設定(例:黒=(0, 0, 0)
)RectangleF()
でテキスト描画エリアを定義し、自動改行にも対応PdfStringFormat()
によって文字の配置(左上、中央など)を指定DrawString()
で PDF ページにテキストを描画(既存内容には影響なし)
生成されたPDFファイル:
📌 ポイント: 複数行の文字列を表示するには、Y 座標を調整したり、複数回 DrawString()
を使うことで実現可能です。
既存の PDF にテキストを追加する
既存の PDF ファイルに 文字を追記する には、ファイルを読み込んで任意のページを取得し、必要な位置にテキストを描画します。
よくある用途:
- 注釈・コメントの追加
- ステータスの記入(例:「承認済」など)
- テンプレートへのフィールド入力
サンプル:既存 PDF を開いて文字を追加
from spire.pdf import PdfDocument, PdfFontStyle, PdfSolidBrush, PdfRGBColor, PointF, PdfCjkStandardFont, PdfCjkFontFamily
# 既存の PDF ファイルを読み込む
pdf = PdfDocument()
pdf.LoadFromFile("input.pdf")
page = pdf.Pages[0]
# フォントを作成(Times Roman、12ポイント、太字)
font = PdfCjkStandardFont(PdfCjkFontFamily.HeiseiMinchoW3, 16.0, PdfFontStyle.Bold)
# 赤色のブラシを作成
brush = PdfSolidBrush(PdfRGBColor(255, 0, 0)) # 赤
# テキストの描画位置を設定
location = PointF(150.0, 110.0)
# 指定位置にテキストを描画
page.Canvas.DrawString("本書類は承認されました。", font, brush, location)
# 修正後の PDF を保存して閉じる
pdf.SaveToFile("output/modified.pdf")
pdf.Close()
🔍 技術解説:
LoadFromFile()
で既存 PDF を読み込みpdf.Pages[index]
によりページ単位でアクセス可能- 元の内容を保持しつつ、テキストを重ねて表示
PointF(x, y)
でテキストの描画位置を設定(単位はポイント)
生成されたPDFファイル:
💡 必要に応じて座標を調整することで、任意の位置にテキストを自由に配置できます。
フォント、位置、透明度、回転角度の設定
テキストの見た目をカスタマイズすることも可能です。Spire.PDF for Python では、フォント・カラー・透明度・回転などのスタイル設定に対応しており、水印や強調表示の表現に便利です。
フォントとカラーの設定
# PdfTrueTypeFont を作成(Calibri、16ポイント、斜体、フォント埋め込みあり)
font = PdfTrueTypeFont("Calibri", 16.0, PdfFontStyle.Italic, True)
# PdfFont を作成(Times Roman、16ポイント、斜体)
font = PdfFont(PdfFontFamily.TimesRoman, 16.0, PdfFontStyle.Italic)
# テキストの描画色を指定する PdfBrush を作成
brush = PdfSolidBrush(PdfRGBColor(34, 139, 34)) # フォレストグリーン(濃緑)
💡 PdfTrueTypeFont
を使えばフォントを PDF 内に埋め込み、他の環境でも文字化けを防げます。ファイル容量を抑えたい場合は、埋め込みなしの PdfFont
を使うのも一手です。
透明度・回転角度の設定
# 現在のキャンバス状態を保存
state = page.Canvas.Save()
# 半透明を設定(0.0 = 完全に透明、1.0 = 完全に不透明)
page.Canvas.SetTransparency(0.4)
# 原点をページの中央に移動
page.Canvas.TranslateTransform(page.Size.Width / 2, page.Size.Height / 2)
# キャンバスを -45 度回転(反時計回り)
page.Canvas.RotateTransform(-45)
# 新しい原点位置にテキストを描画
page.Canvas.DrawString("下書き", font, brush, PointF(-50, -20))
回転と透明度の組み合わせで、水平方向や斜め方向のウォーターマークを表現できます。
サンプル:中央に斜めの透過文字を追加
from spire.pdf import PdfDocument, PdfTrueTypeFont, PdfFontStyle, PdfSolidBrush, PdfRGBColor, PointF
from spire.pdf.common import Color
# PDF ファイルを読み込む
pdf = PdfDocument()
pdf.LoadFromFile("サンプル.pdf")
page = pdf.Pages[0]
# 透かしとして描画するテキスト
text = "外部提供禁止" # "Confidential" を日本語で「機密」と翻訳
# フォントを作成(Arial、40ポイント、太字、フォント埋め込みあり)
font = PdfTrueTypeFont("Yu Gothic UI", 40.0, PdfFontStyle.Bold, True)
# ブラシを作成(ダークブルー)
brush = PdfSolidBrush(PdfRGBColor(Color.get_DarkBlue())) # ダークブルー
# テキストサイズを測定して中央位置を計算
size = font.MeasureString(text)
x = (page.Canvas.ClientSize.Width - size.Width) / 2
y = (page.Canvas.ClientSize.Height - size.Height) / 2
# キャンバスの状態を保存
state = page.Canvas.Save()
# 透過度を 0.3(30%の不透明度)に設定
page.Canvas.SetTransparency(0.3)
# 原点をページ中央に移動
page.Canvas.TranslateTransform(x + size.Width / 2, y + size.Height / 2)
# キャンバスを -45 度回転(反時計回り)
page.Canvas.RotateTransform(-45.0)
# テキストを中央に描画
page.Canvas.DrawString(text, font, brush, PointF(-size.Width / 2, -size.Height / 2))
# キャンバスの状態を元に戻す
page.Canvas.Restore(state)
# 水印付きの PDF を保存
pdf.SaveToFile("output/with_watermark.pdf")
pdf.Close()
💡 「機密」「副本」などの文字を斜めに薄く表示したい場合に有効です。複数ページへの一括挿入も可能です。
生成されたPDFファイル:
⚠ ファイルが他のプロセスによって使用中の場合、保存時に PermissionError
が発生することがあります。
よくある問題とクロスプラットフォーム対応
PDF に文字を追加する際、以下のような問題が発生することがあります。主な原因と対処方法を以下にまとめます:
問題 | 原因 | 解決策 |
---|---|---|
文字位置がズレる | ページサイズを考慮していない | ClientSize や MeasureString() を使って動的に調整 |
文字が表示されない | フォントが未対応または不足 | Arial Unicode や Noto Sans を使用し、必要に応じて埋め込み |
Unicode 文字が正しく表示されない | フォントが対応していない | 広範な Unicode 対応フォントを選定し、埋め込む |
テキストと本文が重なる | Y 座標が近すぎる | MeasureString() で高さを計測し、行間を調整 |
文書に透かしが表示される | 有償版を未認証のまま使用している | 無料版を使うか、一時ライセンスを申請 |
ファイルサイズが大きくなる | フォントを埋め込んでいるため | PdfFont を使ってフォント埋め込みを避ける |
macOS/Linux で表示が崩れる | OS 間のフォント差異や描画方式の違い | クロスプラットフォームフォントを使用し、必要ならフォントを同梱配布 |
まとめ
Spire.PDF for Python を使えば、PDF ドキュメントに柔軟に文字を追加できます。新規作成・既存編集・バッチ処理まで対応しており、フォント・配置・スタイルも自在に調整可能です。
まずは無料版で試してみるか、一時ライセンス を取得して全機能を体験してみてください。
📌 よくある質問(FAQ)
Python で PDF に文字を追加するには?
DrawString()
メソッドを使うことで、フォントや位置、スタイルを指定してテキストを描画できます。
既存の PDF に書き込みはできますか?
はい、できます。LoadFromFile()
で PDF を読み込み、対象ページに DrawString()
で文字を挿入できます。
テキストファイルを PDF に変換できますか?
テキスト内容を 1 行ずつ読み込み、位置を調整しながら PDF に描画することで変換可能です。
複数の PDF に同じ文字を一括追加できますか?
はい。ループ処理で PDF を順次読み込み、共通のテキストを挿入することで実現できます。